ホーム> 法林閑話
がんサロンに参加して

 私は京都市内の臨済宗系寺院を主に活動されている臨床僧の会・サーラより「黄檗に近い京都南部の病院のがんサロンに僧侶として参加してもらえないか」との依頼があり、昨年末より宇治市内にある病院と個人の自宅で開かれているサロン二か所に参加しています。

 活動内容は僧侶と解ってもらうために作務衣を着て訪問しますが、禅宗僧侶として特別な事をするでもなく、コンフォートハンドと言う手のマッサージをしながらお話を聞かせてもらうのであります。サロンに来られている人たちは一応病院を退院して自宅で療養をされている方が中心です。話の内容は、発症後の家族の事や仕事の事、また再発の恐怖や再発後の治療の継続をどのようにするのか、もう諦めて放棄してしまうのかお医者さんには直接話せない事柄を顔なじみになる事によって本音で話をして下さるのです。そのような時、私は医者ではないのでアドバイスをするでもなく、ただただお話を傾聴させて頂くのであります。

 また、今年の六月からは法林院内で月一回「緑蔭」と言うサロンを開催しています。ここでは写経や座禅、精進料理などの講座が持てないかとの事であります。現在のところは顔なじみの患者さんが来院されて雑談をしている所です。しかし、八月に開催した時には、その患者さんが小学六年生の男の子を連れて来られました。その方はそのお子さんが四歳の時に乳がんを発祥され、その後そのお子さんには特別な事をやってやることができなかったと言われたのです。黄檗山の近くには宇治市民プールがありますのでお母さんにはお寺の留守番をお願いして二時間近く二人で水泳を楽しみました。水泳はその患者さんにとっては肉体的・体力的に絶対できない事であり、がん患者の家族の支援と言う大切なケアができたと思っています。僧侶であれば難しい佛法のお話をすることも必要ですが、患者さんはお寺のゆったりとした空気の中で時間を過ごせる大切な場所と捉えられています。お寺が真の安らぎを与える所として利用されることは有り難いことです。

 私は現在この二種類のサロンにかかわっています。病院内のサロンは患者さん同士の情報交換や交流の場として必要なところです。ただ、多くの方が出入りされていますので、あまり他人に聞かれたくない事柄をお寺でゆっくりとお話しされたい方もいます。私は共に大切な場所として今後も取り組みをしていきたく思っています。


                                    (法林院 住職)
                     「瑠璃燈」 第二十一号(平成二十六年)より

スマートフォンサイトへ